【実験】ChatGPTで採用スカウトはどう変わる?実際に文面を作成し、AIとの付き合い方を考えてみた

採用領域でも「AIで業務を効率化できるのではないか」という話題が出始めています。ChatGPTなどを使ってスカウト文章が作成できれば作業効率が上がり、かつ効果的なスカウトが可能になるかもしれません。しかし実際の採用担当者が使えるレベルなのかが、気になるところではないでしょうか。

この記事では、ダイレクトリクルーティングサービス「core scout(コアスカウト)」が、話題のChatGPTを活用することでスカウト型の採用手法がどう変化していくのかを、実際に使いながら考えてみました。

▶︎採用代行サービス『core scout』のサービス資料はこちら

ChatGPTで採用業務を進める準備

生成AI(Generative AI)とは、人工知能(AI)の一種で、データや経験から学習して、新しいデータやアウトプットを生成する能力を持つAIシステムのことです。

生成AIが社会に与えた影響は大きく、自然言語処理(NLP)、画像生成、音楽生成、スタイル変換など、さまざまな分野で活用されています。ニュース等でよく聞くChatGPTなどのGPTシリーズ(OpenAIによって開発された自然言語処理AI)は大量のテキストデータから学習して新しいテキストを生成できるAIで、採用領域での活用も期待されています。

今回実験してみること
ChatGPTを使ったスカウトがどこまでできるか
実験した人:石川裕士
人材紹介のキャリアアドバイザー歴6年。core scoutではプロジェクトマネージャーとして採用におけるダイレクトリクルーティングの代行業務を担い、主にIT業界のエンジニア採用支援を行っている。

架空の企業を設定する

ChatGPTで採用業務を進めるにあたり
①架空の企業を設定する
②求人内容を学習させる
③スカウト文面をつくらせる の3ステップを決め、まずはChatGPTに「架空の企業」をつくらせました。

今回の実験で使用する架空の企業は、ChatGPTに対して

実験に必要な架空の企業、求人の情報を列挙してください。
GPT4がどれだけ採用におけるスカウトで有効か実験しようと思います。
人間が採用における本来の価値提供について考えるための実験です。
ポジションについてはITエンジニアの職種を想定しています。

という指示で出力させたものです。

架空の企業】
企業名: テクノヴォーグ株式会社
業種: テクノロジー・ソフトウェア開発
従業員数: 250人
設立年: 2015年
本社所在地: 東京都港区

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テクノヴォーグ株式会社は、クラウドベースのビジネスソリューションを提供するソフトウェア開発企業です。同社は、中小企業を中心に、オンラインでの業務効率化とデジタルトランスフォーメーションを推進するための幅広いソリューションを展開しています。

主なサービスとしては以下のようなものがあります。

1. 顧客管理システム (CRM): 顧客情報の一元管理、営業・マーケティング活動の効率化を支援するクラウドベースのCRMソフトウェア。
2. 在庫管理・販売管理システム: 在庫管理、発注管理、販売管理を一括して行えるクラウドベースのシステムで、リアルタイムでの在庫状況の把握や効率的な業務遂行を実現します。
3. 人事・労務管理システム: 社員情報管理、勤怠管理、給与計算など、人事・労務業務を効率化するためのクラウドベースのシステム。
4. オンライン会議・コラボレーションツール: リモートワークやチーム間のコミュニケーションを効率化するためのビデオ会議、チャット、ファイル共有などの機能を提供するオンラインプラットフォーム。

テクノヴォーグ株式会社は、これらのサービスを通じて、企業が業務効率を向上させ、デジタル化の波に対応できるようサポートしています。また、同社はセキュリティやプライバシーにも力を入れており、顧客に安心してサービスを利用してもらえるように努めています。

テクノヴォーグ株式会社が競合に対して持っている強みは以下の通りです。

1.ユーザーフレンドリーなデザイン: 同社の製品は、使いやすさと直感的な操作を重視して設計されており、顧客が迅速に機能を理解し、効果的に活用できるようになっています。
2.カスタマイズ性: 顧客のニーズに合わせて製品をカスタマイズできる柔軟性があり、中小企業が自社の業務に合ったソリューションを導入しやすくなっています。
3.総合的なサポート体制: 導入から運用、アップデートまで、顧客が製品を安心して利用できるように、迅速かつ丁寧なサポート体制を整えています。
4.価格競争力: 高品質なソフトウェアをリーズナブルな価格で提供し、中小企業にも手が届くようにしています。
5.セキュリティとプライバシー: セキュリティ対策やプライバシー保護に力を入れており、顧客が安心してビジネスソリューションを利用できる環境を提供しています。

これらの強みを活かして、テクノヴォーグ株式会社は競合他社との差別化を図り、売り上げを維持・拡大しています。

求人内容を学習させる

この企業情報と、架空の求人情報をChatGPTに学習させ、スカウト文章を作成させました。

【ChatGPTが出してきたスカウト文章】

件名:
【独自のCRMシステム開発】バックエンドエンジニア募集!あなたの経験が当社で活かせます!

本文:
こんにちは、[候補者の名前]様!

この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。私はテクノヴォーグ株式会社の採用担当者でございます。
[候補者の名前]様の経歴とスキルセットを拝見させていただいたところ、私たちが現在募集しているバックエンドエンジニアのポジションにぴったりだと感じました。
あなたの経験が当社で大いに活かせると確信しております。
当社では、CRM関連製品およびサービスの企画・開発・提供を行っており、
バックエンドAPI開発をリードするアジャイルチームの一員として、CRMシステムの開発に携わっていただく予定です。

【ポジションの特徴】
 ・数名のバックエンドエンジニアをリードする立場で、技術力とチームマネジメント力を活かせます。
・Spring Boot、Kotlinを使用したバックエンドAPIサーバ開発の経験を積むことができます。
・リモートワークや在宅勤務が相談可能で、柔軟な働き方が実現できます。

【必須条件】
・JavaまたはKotlinを使ったWEBアプリケーションの開発経験3年以上
・PostgreSQL等のRDBMSを用いた開発経験
・AWSなどクラウドサービスを利用した開発経験
・Linuxコマンドの基礎知識
・GitやSubversion等のバージョン管理システムの使用経験

【歓迎条件】
 ・SpringBootを用いたWEBアプリケーションの開発経験
・数名以上の開発チームでのリーダー経験
・Kubernetes、コンテナを利用した開発経験

【給与・待遇】
予定年収:500万円~700万円
フレックスタイム制、通勤手当、社会保険、退職金制度など充実した福利厚生をご用意しております。

興味がおありでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。オンライン面接も可能ですので、お手数のご都合に合わせた面接が可能です。
私たちテクノヴォーグ株式会社では、社員一人ひとりが自分のスキルと経験を十分に発揮できる環境を提供し、技術者としての成長を大切にしています。
また、働きやすい環境も重視しており、フレックスタイム制やリモートワーク対応など、柔軟な働き方が実現できるよう配慮しています。

もし[候補者の名前]様がご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。オンライン面接のご希望や、その他ご質問がございましたら、お気軽にお申し付けください。
あなたのご経験とスキルを当社で活かし、共に成長していけることを心よりお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。

テクノヴォーグ株式会社 採用担当 [担当者の名前]
Email: [採用担当者のメールアドレス] 電話: [採用担当者の電話番号]

ぱっと見はよさそうですが、しっかり読んでみるとよくも悪くも当たり障りのない印象で、これでは返信が来ないのではないかと感じました。
その上で、たとえば以下の「ポジションの特徴」の部分はよく考えられていると評価できます。

【ポジションの特徴】
 ・数名のバックエンドエンジニアをリードする立場で、技術力とチームマネジメント力を活かせます。
・Spring Boot、Kotlinを使用したバックエンドAPIサーバ開発の経験を積むことができます。
・リモートワークや在宅勤務が相談可能で、柔軟な働き方が実現できます。

しかし詳細な条件になってくると、突っ込みどころが見え始めます。

【必須条件】
・JavaまたはKotlinを使ったWEBアプリケーションの開発経験3年以上
・PostgreSQL等のRDBMSを用いた開発経験
・AWSなどクラウドサービスを利用した開発経験
・Linuxコマンドの基礎知識
・GitやSubversion等のバージョン管理システムの使用経験

【歓迎条件】
 ・SpringBootを用いたWEBアプリケーションの開発経験
・数名以上の開発チームでのリーダー経験
・Kubernetes、コンテナを利用した開発経験

私なら「JavaまたはKotlinを使ったWEBアプリケーションの開発経験3年以上」は書きません。条件に合うからスカウトをお送りしているので、わざわざ書くとテンプレ感が増すという判断です。
「必須条件」「歓迎条件」の欄では与えた情報を列挙するという行動を取っており、スカウトに必要な要素なのか判断ができていないようです。

情報の取り扱いだけではなく、日本語にも少し違和感があります。

興味がおありでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。オンライン面接も可能ですので、お手数のご都合に合わせた面接が可能です。

意味は分かりますが、あまり文章力のない新入社員のような言い回しになっています。
しかし、最後に会社の魅力を訴求できているのはよいと思いました。

私たちテクノヴォーグ株式会社では、社員一人ひとりが自分のスキルと経験を十分に発揮できる環境を提供し、技術者としての成長を大切にしています。
また、働きやすい環境も重視しており、フレックスタイム制やリモートワーク対応など、柔軟な働き方が実現できるよう配慮しています。

さらにブラッシュアップしてみる

上記のスカウト文章は、たたき台としては使えそうな印象を持ちました。

さらに、スカウトを送付する前に、ペルソナを設定させる目的でターゲットを聞いてみます。

そもそもターゲット選定は、採用業務の要ともいえる重要要素です。人間でも難しい部分ではありますが、もし後輩が上記のターゲットを出してきたら「伝書鳩じゃないんだぞ」と注意するかもしれません。 ここから先はペルソナの解像度と要件定義の精度を上げることを目的として、改めて今回の求人の目的を伝えて学習させることにします。

上記の学習が終わったところで、スカウト対象と採用ツールについても聞いてみました。

スカウト対象者は、必須要件に忠実に出してきた感じがあります。そもそも必須条件を修正して学習させる必要がありそうです。

現時点では、運用方法や検索方法まではChatGPTに指示できません。
このあたりは、経験の豊富な採用担当者が情報を精査する必要がありそうです。

最後に、ターゲットにとってこの企業の魅力がどこにあるかを考えさせてみました。これができれば、人による最終的なブラッシュアップの精度が上がります。

訴求ポイントが一般的すぎて少し弱い気もしましたが、架空の企業なので仕方ないといえるでしょう。実際に採用担当者が作成するときは、もう少し社内のカルチャーや実情に沿った、手触り感のある内容になるはずです。

まとめ

以下、ChatGPTにスカウト業務をさせたときの印象をまとめます。

【要件定義】
簡単に聞くだけでは、おそらく納得のいく内容は出てきません。ChatGPTに依頼する人間が、もっとニーズを噛み砕き、言語化しておく必要がありそうです。

【ペルソナ設定】
ペルソナを出すことはできても、そのような人材が実際にデータベースにいるかいないかは判断できなさそうに感じました。そもそものデータベースの特性を学習させる必要がありそうです。

またどの候補者にどのような文面でスカウトするかは、結局人間が考えないと難しい印象です。検索条件を詳細に設定すれば可能になるかもしれませんが、このあたりの経験によるノウハウは、そもそも言語化しにくいという面もあります。

【文面抽出・作成】
必要な情報をきちんと学習させることで、精度が上がっていく印象です。


さきほどの架空企業のやり取りを踏まえて、もう一度実践してみました。

【完成した文面】

件名:
 {氏名}様へのバックエンドエンジニアのスカウトオファー - テクノヴォーグ株式会社

{氏名}様
お世話になっております。テクノヴォーグ株式会社の採用担当です。
この度は、{氏名}様のご経歴とスキルを拝見させていただき、バックエンドエンジニアとして弊社での活躍を期待して、スカウトのご連絡を差し上げます。

私たちが特に{氏名}様に注目した理由は、以下の通りです。
1. バックエンドエンジニアとして豊富な経験を持ち、業務範囲を広げることで柔軟な対応ができる能力があること。
2. レガシーな環境に対して改善策を見つけ出し、尽力して取り組んできた実績があること。
3. 新しい技術の導入だけでなく、保守性を考慮した技術選択を行っており、長期的な視点を持って業務に取り組んでいること。

弊社では、このようなバックグラウンドを持つ{氏名}様に、さらにスキルを磨いていただく環境を提供したいと考えております。
私たちと共にCRMシステムの開発を進めていく中で、新しい技術や知見を学び、業界をリードする製品やサービスを創り出すことができます。

興味を持っていただけましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。詳細についてお話しし、ご質問にお答えさせていただきます。

お問い合わせ先:
テクノヴォーグ株式会社 採用担当
メールアドレス:recruit@technovogue.co.jp
電話番号:03-1234-5678

ご連絡をお待ちしております。

敬具

テクノヴォーグ株式会社 採用担当

詳細に指示を出しながら進めたため、最初の文面よりも精度が上がり、割といい感じの文章になったなと感じました。自分で文言の微修正をする必要がなく、結果的にスカウト文面をラクに作成できました。

AIとの付き合い方を考える

今回の実験から得たいくつかの考察を記載しておきます。

・大規模な自然言語処理のできるAIを、スカウト業務に実装できなくはない。しかし企業の課題から要件を定義し、訴求ポイントを意思決定することは現時点では人間にしかできなさそう。

・どのような学習をさせるか、どのように学習させるかという観点は引き続き必要なため、ChatGPTを扱う人のセンスが必要。ただし企業の課題、要件定義する際に必要な情報を整理し、列挙することはある程度可能なため、人間の壁打ち相手としては機能する。

・経験豊富なスカウト担当者の、「どのペルソナにどのように訴求していくべきか」というノウハウをデータ化しAIに学習させることで、最適な提案をしてくれる可能性はある。ただし情報公開に関するセキュリティの課題を乗り越えなければいけないため、現場で使うには道のりも遠い。

・AIがある程度もっともらしいスカウト文面を作成できたとしても、実行の意思決定は人間にしかできない。今後、キャリア選択やその戦略を学習したAIが登場したときは、AI同士でのやり取りによっては適切なスカウトを作成し、展開もできるようになると思われる。

・現場と人事とのコミュニケーションや価値観がずれていれば、AIをうまく使いこなせない。会社組織のように情報を持っている人が複数人いる場合は、各求人の強み、弱みを把握してそれを適切にAIに学習させ、スカウトを実行するPMが必要になる。

スカウトならお任せください

採用業務だけではなく、どのような仕事であってもAIとの付き合いを避けて通ることはできないでしょう。さまざまなツールを使いこなしつつ「人」にアプローチするという本質を忘れずに業務を進める必要性は、今後も変わりません。

「core scout(コアスカウト)」を提供している私たちも、積極的かつ慎重にAIを活用しつつ、新時代の採用業務について考え続けていきます。

core scoutでは、戦略立案から実行支援、改善施策まで、エンジニア採用のプロにダイレクトリクルーティングの運用をお任せいただけます。 
採用成功に向けた取り組みはもちろんのこと、スカウトメールの豊富なナレッジや、他社の事例も踏まえながら、適切にPDCAのサイクルを回し、お客様の採用競争力を高められるようご支援いたします。

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